『混沌たる社会への旅立ち−スタンドからフィールドへ』

「豊饒のなかに人々は餓死する」
カーライルの言葉である。まさに日本はこの状態にある。

 君たちが旅
立つ社会は混乱している。政治の世界も、経済の世界も、教育の世界も、すべての分野が混沌のなかにある。その原因は、思想の欠如にある。多くの日本人は物質的豊かさを第一とし、精神の豊かさを忘れ去ってきた。最近の青少年の事件、通信情報機器を用いた犯罪など、「こころ」の壊失以外のなにものでもない。しかも悪いことには、様々な現象を、他人事ととらえ、国民全員が評論家となっている。マスコミや一部のキャスターの言葉を鵜呑みにし、自らの思想を持たず、思考することなく、自らの意見のごとく議論する怖さを知るべきである。評論家は部外者であり、フィールドに立つのではなく、安全な場所であるスタンドから声をあげているにすぎない。この責任の多くは、マスコミに帰される。関心を喚起するためとの大儀名分のもとに、政治・経済・教育などの問題を、あたかも芸能番組のごとく扱うことにあるといえる。このようなマスコミの姿勢に同調してもらいたくない。芸能やスポーツに関して評論することは、対象となる人の人格や人権を侵害しない限りかまわないと思う。しかし、日本および日本人にとって、本質的な問題を同レベルで扱ってはいけないことを認識してほしい。

 君たちには評論家になってもらいたくない。豊かな心と問題意識を持ち、思考し、意見を形成し、議論するフィールドにたつプレーヤーになってもらいたいし、それを実践する能力を身につけるために、最高学府に学んだのだと思う。今までの学習を無駄にしないでください。増田ゼミナールで学んだことに自信を持って下さい。  豊かな心を育むための糧として、詩人であり書家である「相田みつを」さんを紹介しておきます。在家で仏教を学んだ人です。幾つかの書籍が出されていますが、「にんげんだもの」(文化出版局)という本の中に次のような詩があります。卒業にあたっての贈る言葉にしたいと思います。

<子供へ一首>
どのような
道を
どのように
歩くとも
いのちいっぱいに
生きれば
いいぞ