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日々仕事をする上で、忘れがちであるが、忘れてはならないことを述べておられます。 皆さんの参考になればと、転載させていただきます。
仕事は毎日が瀬戸際である<鈴木敏文が語る仕事・1> 昨日の続きで仕事をするな
過去の成功体験が なぜ邪魔になるのか
日本の世の中が大きく変わって来ているのに対して、多くの人々は従来やっている仕事をそのまま、ほんの少しずつだけ変えて対応しようとしている。よくいえば改善ですが、そんなことでは時代の変化に追いつかないという事実になかなか気づかない。改革が必要な時代に微調整をしても意味はないですから、やがて自分たちの職場を失うような事態にまでなる。
たとえば小売業で言うとスーパーもデパートも売り上げ不振が続いています。何が問題なのかは、本当は痛いほど分かっているのに、直視し自ら解決しようともせず、「世の中が悪い」「政治が悪い」「景気が回復したら」と言って何か変わりますか。
他に責任を転嫁して、あなたが何か救われるのかと言えば、何も変わりません。怖いことですが、人間は経験から学ぶ存在であり、またそれにしがみつく習性を持つ存在です。そこにあるのは「まあ、こんなものだろう」という妥協。以前はこの方法でうまくいったなどと考えていると誤ります。
私はグルメではありませんが、たとえばセブン‐イレブンのお弁当はほとんど毎日試食する。おいしいかまずいかだけは、だれにも負けずに判断できます。先日は大阪でオリジナルの焼き立てパンを食べてみてこの味は何だと注意して変えさせた。比較すればすぐ気づくのに、外見に変化がないと「こんなものだ」と安易に妥協してしまう。
ファッションでも同じです。50代、60代女性の服を若い商品バイヤーが仕入れると、昔の老人くさい商品ばかりになる。目を開いて現実を見れば、中高年女性も20代、30代と変わらないデザインを求めています。体形は違っても、時代のファッション感覚には差がない。過去の体験に引きづられている人は目が曇っていくのです。
朝目覚めるたびに 今日の感性を研げ
仕事への取り組みは謙虚であるべきだし、本気であるべきだと思いますね。前回うまくいった喜びの余韻は心地よいけれど翌日には顔を洗った気持ちで、新たな1日を始めなくてはならないと思う。会社に出ると同じ顔ぶれだし、不満ながらも給料も賞与も出る。のどかな昼休みなどもあって毎日同じだなどと惰性が染みつくと、あなたの仕事人生そのものがくすんでいきます。今日は何が変わったか、新しい発見はあるか、それをどう生かせるか。ほんの小さな事でも時代に向き合う気持ちが支えです。毎日が瀬戸際だと自分を追い込んで行くしかない。
私はこうして今日も経営者として出社している。社員にも社外の方にもさまざまな話をし、みなさんも耳を貸してくれますが、もし現在の職を失い、転職の市場に放りこまれたら、はたして私を雇う企業はあるだろうか。ないでしょうね。
なんの技術も資格もないし、売り場で数字を稼ぐセンスもない。経営のノウハウをいくらか実践しているとはいえ、それも限られた業態の中である。逆に私が人事担当でも、社長経験者は雇いませんね。だから私も昨日の経験は引きずるものかと自分を厳しく戒める。朝家を出るときには、五感を使って時代を見よう、今日1日が真剣勝負と思っていますよ。(談)
すずき・としふみ ●1932年長野県生まれ。56年中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(株)(現〈株〉トーハン)入社。63年(株)イトーヨーカ堂入社、78年(株)セブン-イレブン・ジャパン代表取締役社長就任。91年ザ・サウスランド・コーポレーション(現セブンイレブン・インク)取締役副会長(現職)。92年イトーヨーカ堂代表取締役社長、セブン-イレブン・ジャパン代表取締役会長(現職)。2003年イトーヨーカ堂代表取締役会長(現職)、同年勲一等瑞宝章ほかの受賞がある。
仕事は毎日が瀬戸際である<鈴木敏文が語る仕事・2> あなたのズレを見極めよ
意志を持たないと 変化は見えない
情報をどのようにとらえていくか。社会の変動は何を基準につかむか。その対策として、あなたは本や雑誌などからたくさんの情報を得ていると思うかもしれません。もちろんそれは大切ではあるが、だれもが持ち得る共通の情報です。しかも人の目を通して集められてきた素材の一つです。だからそれだけをものさしにして自分の仕事を判断してはいけない。
よく、本を読みながら線を引いている人がいます。思わず、ためになる、自分も納得できると感じるからだと思いますが、実はそこに発見は少ない。自分が共鳴する所をただ確認しなぞっているだけではないのか。著者の考えに同調するなら、すでにあなたの考えはそこに行きついてしまっているわけで、これは安心するために読んでいるのだと冷静に判断するべきです。
あなたの仕事をとりまく環境の変化は自分自身で把握するべきだし、自分にしか見えないものです。たとえば売り上げ目標を達成できなかったという時、そこには必ず理由があり現状把握のズレがあったはずです。その要因はどこにも書いてありませんし、だれからもアドバイスなど期待できません。品質、品ぞろえ、価格、加えて対象となるお客さまの好みの変化など何かを読み違えた。本や雑誌に書いてある今の経済環境とか時代の流れを活字で読んでみても、目の前にある商品の売り方の答えなど書いてありません。素直に「ズレていた」と認め、自分自身で間違いを発見し修正するしかない。
私はこうして取材を受けたあと、記者が書いた文章を読んで驚くことがよくあります。私の言ったとおリの内容ではなく、自分の発言と違う内容に書き直されていたりする。問いただしてみると上司が朱を入れてしまったという。ナマで仕入れてきた部下の情報を自分の考えに沿うよう修正してしまう、その自分の感覚のズレに気づかないのです。業績が上がらない原因を探す時、最も疑ってかかるべきは自分自身です。
素直に考える
仕事の現場にいる人は、決してサボったり遊んだりしているわけではない。人それぞれに一生懸命で必死にやっていることはよく分かっています。それでもうまく行かないという時、考え方を一度すべて白紙に戻して欲しいと思います。昨年の実績とか、業界のデータなどはいりません。今すぐに自分の目の前にある状況を洗いだし、原点に立ち返って考えることです。
私たちの競争相手は競合他社ではないし、他業種でもない。それはただ一つ、時代の変化です。その中でめまぐるしく変わるお客さまのニーズにどう対応していくか。自分の目で変化をどう見極められるか。それに尽きると思います。難しいのは、お客さま自身も自分が何を欲しがっていたのか、提示されてみないと気づかないということですね。目の前に形となって現れてはじめて、ああこういうものやサービスがいいなと喜んでくださる。
そのためには相手の立場になるしかありません。何もかも飽和状態のように見えるかもしれませんが、それは違う。時代が動くということは、その動いた分だけ新しいニーズが生じているということ。あなたが頑(かたくな)に自分の価値観にしがみついてその場から動かずにいるなら、その分のズレが起きているのです。(談)
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